眼鏡概念

適温探し

毒にも薬にもならない話

藤原基央の右ポケットには何があるか

日曜の晩にやってる関ジャムというテレビ番組が面白い。この番組の何がすごいって、30分ただじっと見てるだけでなんとなく名曲をつくれそうな夢を見ることができる。そのくらい各専門家さんの説明がわかりやすい。そのあとやってるやべっちFCを見終わる頃にはその夢からも覚めているが。(その代わりにリフティングとかめちゃくちゃできそうな夢を見ている。)

 

ちょっと前の放送で失恋ソング特集をやっていた。詳しい内容はやべっちFCのおかげで忘れてしまったが、最近巷には爆発的にヒットしている失恋ソングがないらしい。というのも、SNSが流行した結果失恋しても一人で音楽を聴きながらさめざめと泣き腫らすようなことがなくなったからだとのことだった。言われてみれば最近会いたくて震えるような曲を見かけない。西野カナも幸せそうだ。

 

その後番組では往年の失恋ヒットソングを紹介していた。西野カナが震えるよりもずいぶん昔の曲だけど、今でもサビは聞けばわかるから名曲はすごい。

 

さよならと言った君の気持ちはわからないけど

いつもよりながめがいい左に少しとまどってるよ

もし君に1つだけ強がりを言えるのなら

もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対

『もう恋なんてしない』槇原敬之

 

「いつもよりながめがいい左」という表現から、相手がいた日常とその相手の不在を連想させてしまう、描写に震える。売りことばに買いことばでつい「もう恋なんてしない」と口走ってしまうのが男性。そしてそれをのちのち後悔してしまうけど時既に遅いのも男性。本来男性とは女々しい生き物。女々しくてつらい生き物だということを端的に伝え、しかもそれを曲タイトルとサビのフレーズを持ってくる。女々しさの化け物としか言いようがない。僕が女性だったらおつきあいお断りしたいタイプで間違いない。

 

他に紹介されたのが、プリンセスプリンセスのMだった気がする。これまた名曲。「いつも一緒にいたかった」というTHE失恋!なワードから入るこの曲も時代を超えて度々耳にする。

 

あなたのいない右側に

少しは慣れたつもりでいたのに

どうしてこんなに涙が出るの

もう叶わない想いなら

あなたを忘れる勇気だけ 欲しいよ

『M』プリンセスプリンセス

 

お気づきだろうか?どちらの曲も男性が右側にいる。奇しくも男が右、女が左の構図になっている。これはもう世間一般の常識がそうか、あるいはこの人たちが付き合ってたかのどちらかでしかない。おそらくというかいうまでもなく前者だと思うので、少しばかり調べてみた。調べてみたなんて大層な言葉使ってるが、googleで「男 右側」と検索したらあれよあれよと出てきた。なんならNAVERにもまとめられてた。

 

男は右側を好む?「立ち位置」でわかる心理 - NAVER まとめ

 

左を制して男性を制す!男性の左側にいるのが良い理由とは? - NAVER まとめ

 

女性目線でもまとめられていたが、リバウンドを制するものが試合を制すという某漫画に出てくる名ゼリフによく似ている。これを言っている女子はきっと常に鼻息が荒い。周りからはそのリーダーシップや真面目な性格からか、キャプテンかあるいはゴリと呼ばれている。リバウンドをとるときはおそらく「フンッ」と言う。その風貌からは想像できないが、妹思いの優しい子だろう。得意技はゴリラダンク。そんな乙女にとって、左側はもはや男性から与えられるポジションではない。自ら奪いにいく。スクリーンアウトは怠らない。

 

ゴリラの妄想が一通り落ち着くと同時に、ある疑問が浮かんだ。

 

藤原基央、逆じゃない?」

 

右ポケットお招き問題

冬が寒くって本当に良かった

君の冷えた左手を僕の右ポケットにお招きするための

この上ないほどの理由になるから

スノースマイル

 

容易に想像できると思うが、君の左手を右ポケットに入れるためには、自ずと相手(女性)を右側に立たせる必要がある。そんなことありません、左側に立たせて右ポケットに左手をお招きする方法はあります!というひねくれた人もいるかもしれない。そしてできなくもないかもしれない。ただその状態で街中歩いてみてほしい。まちがいなく白い目で見られる。悪いことは言わない、相手を右側に立たせてほしい。

 

藤原基央の右ポケットはフェミニズムの塊

二人で歩くには少しコツがいる 君の歩幅は狭い

できるだけ時間をかけて景色を見ておくよ

振り返る君のいる景色を

スノースマイル』 

 

藤原基央にとって歩幅とはあくまで相手に「合わせる」ものであり、もっというとわざと時間をかけて少し後ろ側を歩いている。黙って俺についてこいの対極、優しすぎる。

景色を見るなんてのは照れ隠しの名目。振り返る君しか見ていないし、そこには何の駆け引きも打算もない。ないからこそ藤原基央は立ち位置にこだわらないのだろう。男の自分でもわかる、理想の男性像ここにあり。

 

藤原基央は語らない

君と出会えて本当に良かった 同じ季節が巡る

僕の右ポケットにしまってた思い出は やっぱりしまって歩くよ

君のいない道を

スノースマイル

 

そんな藤原基央でも誰かと別れることはある。ただし彼は別れてもきっと強がりなんて言わないはずだ。思い出はしまったままにしておくし、場違いに披露なんてしないだろう。「もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対」なんてことは言わないよ絶対。そんな女々しさのかけらもないところに同じ男性として痺れるし憧れる。

 

とはいえ曲を聴いてもらえばわかるが、歌詞にはないところで「君のいない道を」というフレーズを繰り返し繰り返し歌っているから、ちょっとは未練もあるんだろう。特に最後の方、「道を、道を」と延々繰り返している。前言撤回、直接的に口にしはしないもののやっぱり女々しさを滲ませている。きっと気持ちが落ち着くまでずっと君のいない道を歩いてる。その不器用さに親近感がわく。(結局どっちでも好き) 

 

終わります

立ち位置に意識して音楽を聴くことはないし、他にもそういう曲があったら比較してみるのも面白そう。自分の日常でも別にどっちに立つかとかはわりと無意識だけど、意識してみたらいろんな駆け引きが垣間見えるかもしれない。

 

気づいた時にはゴリにリバウンドポジション取られてるかもしれませんよ?