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地方出身者は働く場所をどう選ぶ?

帰阪に合わせて、京都北野白梅町にある猿基地に行ってきた。

 

そろそろっと入店してビールを頼んでカウンター席に座ってボートレースの予想をする。定番の流れ。10年前はビール飲んでなかったし、ボートレース予想もやってなかった。10年の間に着実におじさん化しているみたい。切ない。


このお店には就活生がよくやってくる。この日はたまたま九州出身の学生が来ていた。自身がおじさんであることを自覚してて、また知らないおじさんからいきなり声をかけられるのは怖いことも自覚しているので積極的に声はかけない。けど同郷ということもあり、二言三言会話した。で、聞くところによると地元で就職したいらしく翌日から就活で九州に行くとのことだった。いきたい会社も「九州の会社」が軸の一つになってるとのことで、話を聞けば聞くほど当時の自分が頭の中にフラッシュバックしていた。


初めて外から地元を意識した日

就職活動の時、九州(地元)の会社でフィルターをかけて説明会に行っていたタイミングが僕にもあった。J◯九州とか◯鉄とか九州メインの会社はもちろん、九州に支社がある会社は半自動的にお気に入りに放り込んでいた。地元を離れて生活して、初めて外から客観的に自分の生まれた田舎を意識したのがその瞬間だったし、なんでまたこんな辺鄙なところに生まれたんだろうかと悩ましい気持ちになってノートに汚い文字で色々と書きなぐった日もあった。

 

「働く地域」を決めないといけないのは地方出身の就活生共通の悩みだし、都会出身者のそれとは重みが違う。ただでさえ、職種、業種と選択しないといけないことがたくさんある中でプラスαで地域を選ぶのはそこそこの負担だった。これは自分の経験によるものなのでどこまで一般的かわからないけど、地方出身学生が地元就職を考える理由はおおよそ下記にあると思う。

 

地方出身学生が地元を選ぶ理由

①実家があるから(近いから)

②地元に友人知人がいるから

③いずれ帰る可能性があるから

 

①が一番大きい。実家から近ければ近いほど帰省が楽だし、実家から通えばそもそも帰省を考える必要もない。また両親はじめ家族はどんどん年をとるので、将来的に何かあった時近くにいた方が良さそうな気もする。②は地方出身者にとっての都会は東京でないことが多く(九州出身者にとっての福岡)、その地方に止まってしまう人がたくさんいる。そういう人たちが近くにいると楽しいし、ルーツも一緒なので安心する。③はいずれ帰るならその時転職のストレスも味わいたくないし、最初から地元近くで探したい、そんなところだろう。少なくとも僕はそんなところだった。

 

当時の僕は「将来地元に戻りたくなったらその時考える」と折り合いをつけて、働く地域の優先度を下げた。それよりも譲れないものはあったし、何より面白いところで働きたかった。そしてその結果大阪で勤務することになった。履歴書には「将来的には九州を良くしたい」と書いてたし、面接でも似たようなことを言っていたのに採用してもらえてよかった。

 

そしてついこの間九州に帰ってきた。

 

選ぶなら面白い方を

大阪で働いている間、ずっと九州に帰ることを考えていたかといえばそうでもない。頭の片隅にうっすらとはあったが、関西に骨を埋めることを考えたこともあれば東京に出ることを意識した時もあった。そのときに将来的に九州を良くしたいと書いた当時の履歴書見せられてたら憤死していただろう。

 

このタイミングを選んだのも、今九州に帰った方が面白いことができそうだと思ったからで。誰かから言われたわけでも最初からここって決めてたわけでもない。とはいえ数々の決め事をするときに迷ったらどっちが面白いかを判断基準にしてきたのは、これまで一貫している。

 

個人的に当時悩んだ上記の①〜③について実際に一定期間地元を離れて働いてみて思ったことを参考までに書いておく。①②の家族や地元の友人は普段はSNSでやり取りし、盆暮れに顔を見るくらいで全く不便なかったし、③は極端な話戻ろうと思えばいつでも戻れる。なんであんなに悩んでたのかわからなくなるくらい、何の問題もなかった。逆に地元で働いていなかったからこそ、社内外あわせてたくさんの人と関わることができた。その中のたくさんの人が今こうやって九州に戻ってきてからもつながっているし、関西に行けば顔を見たり話をしたりする。たまたま自分は関西だったけど、東京でも他の地域でもきっと同じ結果になっただろう。

 

就職活動に限った話じゃないけど、何かを選ぶときに仕方なくとか止むを得ずとかで判断してしまうと、その分満足度は下がってしまう。とはいえ生きていたら仕方ない状況も止むを得ない場合もあるので、できることは普段からいざという時になるべくそういう状況を回避できるように準備をしておくこと。そして選ぶタイミングになったら迷わずポジティプな判断基準で選択できるようにすること。それを意識するだけでも悩みはきっと軽くなるはずだ。

 

事情や環境には個人差があるし一概にこうとは言えないし、自分が正解だとも思わない。けど、地元でも都会でも会社は前向きな理由で選べるようになってほしい。

 

あとは九州を良くしたいと言った手前、九州を前向きに選択する理由の一つをこれからつくれたらいいなと改めて考えてたら終電をなくして京都の街を雨の中スーツケースひきずってうろついた話。